研究概要 |
全身麻酔薬が,オトガイ神経電気刺激で生じる血圧低下,すなわち三叉神経減圧反応(TDR)に与える影響を検討した. 実験には日本白色種家兎を用いた.ウレタン,α-クロラロースを腹腔内に投与後,気管切開を行い,吸入酸素濃度30%にて換気した.血圧・心拍数は大腿動脈にカニュレーションし,記録した.三叉神経刺激はオトガイ神経にて行い,神経活動記録は頸部迷走神経と交感神経にて行った.昨年度の予備研究で,血圧低下が著明にみられるオトガイ神経の刺激条件は頻度5Hz,強度5,20mAであることが示されたので,今回の刺激条件として,この2種類を用いた. 吸入麻酔薬として,イソフルランとセボフルランを使用した.検討した濃度はそれぞれ0.25〜1.25MAC(tail clamp法)吸入時,すなわち,イソフルランにおいては,0.5〜2.5%,セボフルランにおいては,0.9〜4.5%吸入時とした.静脈麻酔薬としてはプロポフォールを使用し,投与速度が25〜125mg/kg/hrの際の刺激に対する反応を検討した. 吸入麻酔薬使用時には,濃度依存的に刺激に対する反応性が低下し,イソフルランでは1.0MAC,セボフルランでは0.75MACで刺激による血圧低下はほぼ消失した.プロポフォールでは,投与速度を上げるにつれて,刺激による血圧低下の程度は小さくなったものの,125mg/kg/hr投与時においても約8%程度の血圧低下がみられた. なお,血圧低下が小さくなるにつれて,交感神経活動の抑制の程度も小さくなった. 以上より,オトガイ神経刺激の際のTDRは,イソフルラン,セボフルランでは0.75あいは1.0MAC吸入で抑えられることが明らかとなった.一方プロポフォール単独では125mg/kg/hrという大量投与時でもTDRは抑えられなかった.
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