研究概要 |
口腔悪性黒色腫は高い浸潤性増殖能と転移巣形成能を有する。私は高メラニン色素産生能を有する本症の株化(SSM-1)に成功したので浸潤・転移のメカニズムについて研究を行った。実験ではコラーゲン・ゲル培養法により単層培養の欠点である分化機能喪失を防ぎ、細胞の3次元形態、組織構築が観察でき生体に近いモデル実験が可能となった。その結果 1. 継代したSSM-1をコラーゲン・ゲルキットにて3次元培養を行った。細胞がゲル中にconfluentになるには2〜3週間を要し、同時にゲルは収縮した。 2. その時期にホルマリン固定、パラフィン切片、H-E染色を行い顕鏡した。細胞は紡錘形、樹枝状突起を出し、2次元培養とは異なった形態で、より生体に近い形態を得られた。 3. in vitroで悪性黒色腫と間質細胞との反応をみるために,(第1法)患者よりの線維芽細胞を継代し、コラーゲン・ゲルキットで培養し、コロニー状になったSSM-1と混合した。(第2法)コラーゲン・ゲル培養キット中に培養した線維芽細胞の上にSSM-1浮遊液を重積した。以上2方法により悪性黒色腫と間質の浸潤モデルが作成できた。 4. パラホルムアルデヒド固定し、抗ヒトEカドヘリン抗体で免疫組織化学染色を行った。染色の安定性から、当初のABC法でなくSAB法を用いた。その結果、SSM-1は染色されず、初診時生検材料も陰性であり、細胞間の接着の弱いことが確認された。 5. MMP-2をRT-PCR法で検索し、バンドの検出を確認した。 6. MMP-2,MMP-9は抗MMP-2,9抗体で免疫組織化学染色を行った。初診時生検材料も染色したが、メラニン色素のため判定困難で、メラニンの脱色を試みたが不可能であった。その結果、MMP-9は陰性、MMP-2は腫瘍細胞、線維芽細胞とも陽性を示した。それにより、腫瘍の浸潤・転移には線維芽細胞の関与が重要であることが示唆された。
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