1、 オルソパントモグラム上で下顎智歯と下顎管が重なっている、あるいは近接している141歯に対しヘリカルCT撮像後、ToothPix-MPR画像(多断面再構成画像)を用いて分析検討した。その結果、これまでの画像にない3次元的な観点からの所見が得られた。ただしヘリカルCTにおいてZ軸すなわち体軸方向の空間分解能に限界がある。これは撮影時に寝台が移動するため画像の歪みである。XY軸方向すなわち軸位においての画像の歪みはきわめて少ない。今回の検討においてこれらを極力減らす為に、X線ビーム幅1mm、1mm寝台移動、0.5mmピッチ、360度補間再構成法を用いた。以上の条件の場合体軸方向の空間分解能は約0.5mmであると推察される。このため下顎管と智歯の間に存在する骨壁は、0.5mm以下のものは判別困難となる。ただし抜歯操作などではかなりの力が加わるため歯根や骨片による圧迫や挫滅、バーによる損傷など菲薄な骨が介在していても神経損傷は、おこりうるためこれらの画像は予防面において非常に有用である。 2、 智歯と下顎管の間の骨壁が存在しなかったToothPix-MPR画像29症例をオルソパントモグラムと比較検討した結果、1:智歯根尖部における透過性の亢進したもの10症例(34.5%) 2:下顎管の偏位したもの6症例(20.7%) 3:下顎管の白線が消失したもの4症例(13.8%)以上のような特徴的な所見が得られた。今後その他の歯根と下顎管との関係について検討する予定である。
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