研究概要 |
本研究は,口腔癌に対する免疫療法を開発することを目的として,N.Yamamotoらにより血清中のビタミンD3結合蛋白を前駆体として新規に発見されたヒトマクロファージ活性化因子GcMAFを用いて,ジメチルベンツアントラセン(DMBA)によるハムスター頬粘膜化学発癌系における発癌抑制を検討したものである.平成9年度および10年度に得られた成果を以下に述べる. 1. シリアンハムスター(5週齢)29匹をGcMAF投与群15匹と非投与群14匹に分け,アセトンに溶解した1%DMBAを頬嚢に週3回,反復塗布した.その結果,GcMAF非投与群では,DMBA塗布後9〜10週で全てのハムスターに扁平上皮癌が誘発され,20週以内に全てが腫瘍死したのに対し,GcMAF 100pgを週2回,大腿部に筋肉内注射したGcMAF投与群では14匹中2匹に腫瘍形成を認めず,腫瘍形成時期,腫瘍増大速度が遅延し,20週までに腫瘍死したものはなかった.また,担癌による体重減少も軽微であった. 2. GcMAF非投与群のうち,腫瘍の形成された13週目よりGcMAF投与を開始した5匹では,腫瘍の増大と体重減少が抑制され,また,GcMAF投与群で13週目より投与を中止した4匹では,腫瘍の増大が認められた. 3. ハムスター腹腔より採取したマクロファージをin vitroでGcMAF処理すると,濃度依存性に活性酸素生成能が上昇したことから,マクロファージの活性化が確認された.また,in vivo投与の場合でも、GcMAF注射後48時間,96時間で腹腔マクロファージに明かな活性酸素生成が認められた.活性化マクロファージは,仔ハムスター腎細胞であるBHK21およびヒト口底癌細胞KBに対して細胞障害活性を有していた. 以上の結果より,GcMAFはマクロファージ活性化を介して,DMBAによる化学発癌における腫瘍発生を抑制あるいは遅延し,また形成腫瘍に対しては増殖抑制に働くことが示された.このことは,口腔癌に対する新たな免疫療法の可能性を示唆するものである.
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