研究概要 |
摂食機能の円滑な遂行には呼吸の安定が不可欠である。摂食指導を希望する患児の重症化が顕著になっている現在,摂食時の座位(抗重力姿勢)自体が,また食事そのものが過度の運動負荷となり,患児の呼吸循環動態に影響を及ぼす例が認められるようになってきた。従って,摂食機能時の呼吸の解析と呼吸管理が従来にもまして必要とされてきている。 対象:摂食機能障害を有する重症心身障害児(定頚不可)および健常児 方法:インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィー法(RIP)による呼吸モニター,レスピグラフおよび4700オキシキャップにより,胸部,腹部およびその総和の呼吸波形,SpO_2,脈拍数,呼気終末炭酸ガス濃度,呼吸数を測定した。 測定姿勢は,仰臥位あるいは側臥位(以下,水平位と略す)および実際に食事をとっている姿勢(以下,摂食位と略す)とした。 結果:重症心身障害児では,胸式あるいは腹式優位の呼吸等の個体差は認められたが,姿勢の変化(水平位と摂食位)により呼吸波形の変化は認められなかった。SpO_2,脈拍数,呼気終末炭酸ガス濃度,呼吸数は姿勢の変化により有意差は認められなかった。今回測定した摂食機能障害を有する重症心身障害児の摂食時の呼吸は、鼻呼吸か口呼吸かの区別では鼻呼吸が基本であった。姿勢の変化により呼吸循環動態に有意な変化は認めらず摂食指導を行っている姿勢は適切なものと考えられた。症例によっては,中枢性無呼吸を認める場合もあり,中枢性無呼吸を示す症例では、口呼吸あるいは有効換気にいたっていないと考えられる胸部および腹部の呼吸曲線を示すことがあった。この様な場合、呼吸循環動態の変動はまず呼吸曲線および呼気終末炭酸ガス濃度に変化が認められ、続いて動脈血酸素飽和度に変化が認められた。
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