研究概要 |
本研究は、矯正力による歯周組織の改造機構におけるストレスタンパク質(HSP)の役割を明らかにすることを目的として、ヒト小臼歯より得た歯根膜線維芽細胞(PDL)とヒト骨芽細胞様細胞株MG-63にin vitroで持続的圧縮力と周期的伸展力を負荷して、メカニカルストレスによるHSPの発現と発現の制御機構を調べた。持続的圧縮力は粒状鉛で1,2,4g/cm^2に重さを調節したガラス円筒を細胞の上に直接乗せることにより30分〜3日間負荷した。周期的伸展力は、FLEXCELL社製のFlexcercellで1秒間伸展-1秒間リラックスで最大15%elongationの様式で30分〜3日間負荷した。メカニカルストレス負荷後、抗HSP27,47,60,70抗体とHSP60,70の発現に関与している転写活性化因子HSF-1に対する抗体を用いてウェスタンプロッティング法によりこれらの発現を解析した。その結果、PDLは持続的圧縮力によりHSP47,60の発現の増強を認めたが、発現様相はそれぞれ異なった。これに対してHSP70の発現はほとんど変化しなかった。周期的伸展力をPDLに負荷すると、負荷開始12時間以降でHSP47,60,70の発現の変化を示し、その後72時問後まで発現の増強を認めたが、ALPase活性が低いPDLの方が発現を著明に増強した。骨芽細胞様細胞MG-63は持続的圧縮力により細胞増殖活性の抑制と共にHSP27の発現の著明な増強を認めたが、HSP47,60,70の発現はほとんど変化しなかった。HSF-1の発現は持続的圧縮力により増強したが活性化は認められなかった。以上の結果より、PDLと骨芽細胞にはメカニカルストレスによるHSPの発現の制御機構が存在することが明らかになったが、メカニカルストレスの負荷様式と細胞の種類によりその発現様相が異なることが示唆された。
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