研究概要 |
目的:スプリントの装着が上肢肘関節屈曲筋群の筋力に与える影響を正常咬合と叢生について調査する.対象:鹿児島大学の男子学生のうち,顎口腔機能に異常のない正常咬合14名(N群),叢生15名(C群),計29名を対象とした.年齢は22歳から32歳(平均26.5歳)である. 方法:オクルーザル・スプリントとプラセボ・スプリントの2種類を製作した.オクルーザル・スプリント装着時(OS),中心咬合位(CO),プラセボ・スプリント装着時(PS)3条件下で,利き腕の上肢肘関節屈曲筋群の等尺性運動時のAverage Torque(AT),Peak Torque(PT)を測定した.室温は一定に保ち,二重盲検法を実施した.測定はそれぞれの条件で3秒間ずつ3回行った.1つの条件での測定が終了するごとに5分間休憩させた.測定直前に20%,50%,80%,100%の力でそれぞれ1回づつ練習させた. 結果:測定値から,N群,C群のAT,PTはいずれも3条件間に差がなかった. 百分率値から,N群のAT,PTはいずれも3条件間に有意差はなかったが,C群のAT,PTのOSの値は他の2条件に比べ有意に大きかった. 考察:C群のAT,PTのOSの百分率値は他の2条件に比べ有意に大きく,上肢肘関節屈曲筋群の筋力はオクルーザル・スプリント装着時に増加した. 噛みしめによりヒトヒラメ筋H反射は著しく促通を受けてその促通量は噛みしめ強度と正の相関を示す(宮原ら,'91).オクルーザル・スプリントの装着により咬合力は分散され歯列弓内で均等化する(前田ら,'90).叢生では咬合接触面積が正常咬合に比べて小さいので(粥川,'95),オクルーザル・スプリント装着時の咬合力は正常咬合に比べてより均等化され,これが噛みしめ強度の変化に影響して上肢肘関節屈曲筋群の筋力が増加したと考えられる.
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