研究概要 |
本研究では,“S.milleri"グループの細菌の生体内組織への付着・定着機構を解明する一端として,先ず“S.milleri"グループに属する3菌種(S.anginosus,S.consteratus,S.intermedius)の臨床分離株あるいはATCC代表菌株のECMタンパク質に対する結合性をスクリーニングした。“S.milleri"グループ以外の口腔常在レンサ球菌(S.gordonii.S.salivalius,S.sanguis)のECMタンパク質に対する結合性と比較したところ,S.intermediusのlamininに対する高い結合性が特徴として明らかになった。そこでS.intermedius ATCC 27335^T株のlamininに対する結合性を詳細に解析したところ,本菌のlaminin結合性はタンパク性物質によって担われていることが示唆された。次いで菌体細胞表層物質を可溶化し,これからlaminin結合性を示す分子量約50kDaのタンパク性物質を単離した(以上,平成9年度)。 単離された物質のN末端アミノ酸配列を調べ,既知物質との相同性を検討したところ,Staphylococcus aureusのenolaseのN末端との高い相同性が判明した。ほぼ同時期に,A群レンサ球菌において,enolaseが菌体表層に存在し,plasminに結合することによって感染過程に関与することが報告されたことを受けて,S.intermeiusのenolaseのタンパク質としての性状を明らかにする目的で,同遺伝子のクローニングを行った。S.aureusのenolaseの遺伝子配列に基づいてプライマーを設計し,PCR法を用いてS.intermeiusのenolaseの全長のDNA配列を決定した。この配列に基づく推定アミノ酸配列とS.aureusのenolaseとの間には約80%の相同性が認められた。すなわちS.intermeiusのenolase遺伝子の1次構造が初めて明らかにされたと考えられる。さらに本遺伝子の発現系を確立し,遺伝子組み換えタンパク質としてのS.intermeiusのenolaseがlaminin結合性を有することが確認された。
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