研究概要 |
う蝕と歯周疾患は生活習慣と密接に関連する疾患であるといわれ,その予防法として,生活習慣病予防と同様に,保健行動の変容が重要であるといえる。口腔の健康の保持・増進を実践していくに当っては,口腔の局所的因子のみならず,各々の人々の生活行動や健康行動さらに社会・経済的側面等,幅広い分野からのアプローチが重要となってくる。そこで本研究では,口腔保健行動およびショ糖の摂取状況を表す唾液中シュークラーゼ活性と生活習慣との関連性にを明らかにし,さらにデンタルプレスケールを用いた咬合診断と健康診査諸結果との関連性について検討することを目的に調査,研究を行った。 年齢19〜24歳(平均年齢19.5歳)の女性121名を対象に生活習慣,口腔保健行動,甘味食品摂取状況を調査し,また唾液シュークラーゼ活性と生活習慣の関連性について検討を行った。その結果,甘味摂取についての保健指導を従来通り実施しても,保健行動への変容に結びにくいと考えられ,観点の異なる新しいアプローチが必要と思われた。また,唾液中シュークラーゼ活性値は生活習慣を反映するものと考えられ,生活習慣病予防の口腔保健的アプローチの指標になることが示唆された。次に男性24名,女性129名の計153名(平均年齢49.3歳)を対象にデンタルプレスケールによる咬合診断結果と生活習慣および血液生化学検査結果との関連性を検討した。その結果,地域保健活動において,咬合診断は喪失歯数や喪失歯部位状況を説明するのに優れたスクリーニング法であったが,年齢や残存歯数などの交絡因子により,生活習慣や血液生化学検査値との関連性を十分に説明することができなかった。
|