研究概要 |
細胞のタンパク産生能に関して,三次元培養をすることによる影響を,ゼラチナーゼ活性およびTIMP-1,TIMP-2量,およびmRNAの発現を単層培養と比較し,検討を行った.そしてMCによる三次元培養を,歯科矯正治療における骨代謝のin vitroでの実験系に応用するため,機械的刺激を加えた時のmRNAの発現を確認することにより細胞への影響を検討した.その結果,次のような結論を得た. 1.MG-63細胞を用いて,三次元培養と単層培養をした時のゼラチナーゼ活性を比較すると,活性型ゼラチナーゼの産生に関しては有意な差は見られなかったが,プロゼラチナーゼの産生は,単層培養よりも三次元培養の方が有意(p<0.01)に高かった. 2.TIMP-1量は,三次元培養の場合,有意に高く,単層培養の場合よりもTIMP-1の産生・放出が促進されている傾向がみられた. 3.TIMP-2の産生に関しても,単層培養と比較して三次元培養の場合,2.5倍程高く,TIMP-1と同様にTIMP-2も三次元培養によりその産生・放出が促進される傾向がみられた. 4.両培養法とも活性型およびプロ型のMMP-2を産生・放出していた.しかし三次元培養の場合,単層培養では産生されなかったMMP-9が産生されていることが明らかにされた. 5.MT1-MMP,TIMP-1,TIMP-2に関して,明らかに三次元培養を行った方がmRNAの強い発現が認められた.つまり単層培養よりも三次元培養を行った方がMT1-MMP,TIMP-1,TIMP-2を多く産生することがmRNAレベルで示された.しかし,MMP-1,MMP-2,MMP-9に関しては安定した再現性のある結果を得ることができなかった. 6.メカニカルストレスを加えたものの方が加えなかったものに対してTIMP-1産生量の多いことがmRNAレベルで示された.しかし,その差はごくわずかなものであった. 以上の結果から,細胞を三次元培養すると,単層培養と比較して,定量的,定性的に異なった表現型を示すことが明らかにされた.また三次元培養は,歯科矯正治療における有用なin vitroの実験モデルとなり得ることが確認された.
|