研究概要 |
1. 成人ボランティア1名の上顎臼歯頬側面に、歯垢採取装置を取り付け、3日間の歯垢形成後、A液:尿素500mM,CaCl_2 20mM,Na_2HPO_412mM,Na_2PO_3F(MFP)5mMを含むミネラル強化洗口液(Pearceら,1988)、またはB液:Aから尿素を除外した洗口液で、1日3回、4日間連続して洗口しその24時間後に歯垢を採取した。研究代表者加藤の開発した歯垢内のフッ素、リン、カルシウム分布の測定法(Archs oral Biol 42(7),521-525,1997;平成7,8年度科学研究費,課題番号07672248)を利用して、反復採取した試料から歯垢内のフッ素とミネラルの保持停滞に与えるアルカリ環境の影響を評価した。 2. 次に、この予備的検討の結果を参考に、A、B両液に加え、C液:AからMFPを除外した溶液、D液:AからMFP以外を除外した溶液、E液:蒸留水(対照)の5種類の洗口液を調整した。informed consentの得られた被験者11名(年齢20〜31歳)を対象に、同様の方法で分析を行い、歯垢のフッ素保持能におよぼす要因の推定とともに予防歯科領域で利用可能な歯垢のフッ素保持能を高める手法を検討した。 3. その結果、(1)フッ素、ミネラル、尿素またはフッ素とミネラルの共存した洗口液では、洗口24時間後も歯垢内のフッ素の停滞が認められ、洗口によりフッ素保持能が調節できた。(2)ミネラルの作用した歯垢では、ミネラルとフッ素の分布に高い相関が認められた。この効果は尿素の共存で強まることから歯垢pHの上昇によって促進されると考えられた。(3)分散分析による歯垢分画中のフッ素、リン、カルシウム濃度に及ぼす因子としての洗口液と被験者の比較から、こうした歯垢のフッ素保持効果には個人差が大きく影響した。 4. 今後は、エナメル質表層も含めたフッ素とミネラルの動態を検討していく予定である
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