研究概要 |
キラルBINAPロジウム錯体を触媒とする二重結合の不斉異性化反応においては,三環性および七員環のビスシリルエーテルを基質とした場合には,良好な化学収率と光学収率が得られた.しかし,より単純化した基質には適用が困難であることが明らかになった.また,数種の基質を用いた反応の結果から,本触媒は同じ骨格を持っていても,両方のアリル位にある程度の大きさの置換基が存在しなければ,不斉認識を行わないことも明らかにできた. 一方,上記触媒により光学的に純粋に得られたケトシリルエーテルを出発原料として,天然物の不斉合成を試みた.その結果,(-)-malyngolideの新規不斉合成法を開発することができ,(-)-shikimic acidは,2つのルートにより合成することができた.特に2番目の合成法においては共通中間体から(-)-shikimic acidおよび(-)-quinic acidの両者を高い総収率で合成するルートを確立できた.さらに,(-)-zeylenol,(+)-pipoxide,(-)-uvarigranol Gを合成することに成功した.一方,報告されている(-)-epizeylenolの構造が間違っていることを明らかにでき,さらに(-)-tonkinenin Aの構造も,(-)-zeylenolのC6位水酸基を酸化したα,β-不飽和ケトンに訂正する事ができた.また,(-)-isoretronecanol,(+)-trachelanthamidine,(R)-4-hydroxy-2,6,6-trimethyl-2-cyclohexenone,(S)-4-hydroxy-3,5,5-trimethylcyclohexenoneの不斉合成にも成功し,ケトシリルエーテルがキラル合成素子として高い機能性を持っている事を示すことができた.
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