研究概要 |
種々の病気の原因として遺伝子異常の関与が示唆され、2本鎖DNAの認識と情報発現の人工的な制御は未来の治療法として発展が期待されている。抗癌剤や抗ウイルス剤にはDNA結合に基づく阻害剤が多い。一方、種々の蛋白質因子は2本鎖DNAに結合し発現の制御を行っている。本研究では、遺伝子発現の人工的制御分子の開発を目的とし、標的DNAに対する認識分子を磁気ビーズを用いる我々のコンビナトリアル手法によって、320万種類の配列を含むペンタペプチドライブラリーの中から検索する研究を計画した。 我々は、既に固相ペプチドライブラリーと標的分子を結合した磁気ビーズを用いて標的ペプチドを特異的に認識する小さなペプチド配列を見出す新しいコンビナトリアル手法を開発している。こ方法の特長は、標的に対する強い相互作用の認識分子の検索が容易に実現できる点である。そこで、本研究では、固相ペンタペプチドライブラリーと2本DNAを結合した磁気ビーズを混合し、相互作用する固相ビーズを単離することによってDNA結合分子の検索を行った。 その結果、約70種類のペンタペプチド配列を決定することができた。この配列に最も高頻度に含まれるアミノ酸はアミノ末端側から、F-Q-(G,F,Y,orW)-I-Iであり、疎水性アミノ酸が多く含まれることが分かった。これらのアミノ酸を含む配列F-Q-(G,F,Y,W)-I-I-NH(CH_2)_5-COOHおよび検索中に多くの磁気ビーズの結合が観測された他のペプチド〔計11種類〕を合成し、数種の2本鎖DNAオリゴマーと結合能を評価した。ほとんどが比較的強い結合力を持っていたが、特に高頻度に見出されたアミノ酸からなるFQGIINH(CH_2)_5-COOHは天然物DNA結合分子ディスタマイシンよりも強い結合能を示した。
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