研究概要 |
Cyclopentadienone類(1)をジエン基質として各種不飽和化合物類(2)とDiels-Alder反応を行い,[4+2]-環化付加体(3)を得た.3のクラスレート機能の検索,構造変化と溶媒取り込み能との関連,更に取り込み関与因子について,赤外線分光光度計,核磁気共鳴装置(^1H-NMR)、示差走査熱量計(DSC)、熱重量計(TG)、単結晶X線構造解析の観点から系統的な検討を実施した.得られた成果を以下に示す. (1) 3を種々の溶媒で再結晶し,^1H-NMRよりホスト/ゲスト比を決定した.その結果,結晶格子内にゲストを保持するためには,phenanthrene環の様な多環式芳香環により形成される広い三次元空間が必要であった.また,構造変化により取り込み能に顕著な相違が見られ,ジエノフィル部分や1の3,4-位置換基の自由度が増すと包接能が低下した. (2) DSC解析により,ホスト分子がゲスト分子を放出する際に見られる吸熱ピークが,その保持力の大きさによって溶媒沸点より大きくずれることが観測された.また,TGによる包接体の重量減少は^1H-NMRの結果と一致した. (3) 単結晶X線解析から,エーテル系、ケトン系溶媒の包接にはphenanthrene環に対し垂直に固定された芳香環平面が,ベンゼン系溶媒の包接にはphenanthrene環の関与が大きいことが示唆された.この包接には新しいタイプの相互作用が関与しており,ゲスト分子の安定化にはホスト分子とのC-H・・・O型水素結合が,空間の構築に必要な芳香環の固定にはedge-to-face相互作用(σ-π相互作用)が重要な役割を果たしていた.また,溶媒放出に必要なエネルギーはホス卜-ゲスト間の相互作用だけでなく,結晶格子を形成しているホスト分子同士の相互作用も重要な因子になっているものと考察した. (4) 溶媒分子の大きさや形状の違いにより,分子取り込みに選択性が認められ新規ホストの設計指針を得た. (5) キシレンなどの混合溶媒系の分離を試み,高い分子認識を有するホストを発見した.
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