研究概要 |
(1) 相模湖周辺、茨城県、京都市で捕獲した雌狩蜂を種別し、毒嚢を抽出し、逆相HPLCにてイセエビ神経筋標本による活性分画を集め、精製をくり返して単離し、構造は主として現在の質量分析の最先端であるMALDI-TOF-CID法(及びLadder Sequence法)を用いて推定し、Fmoc-L-アミノ酸を用いた固相法で別途合成して決定した。オオフタオビドロバチ(eumenine科)からeumenine mastparan-AF[Ile-Asn-Leu-Leu-Lys-Ile-Ala-Lys-Gly-Ile-Ile-Lys-Ser-Leu-NH_2]を単離し、スズメ蜂毒成分マストパラン様活性に酷似していることを発見した。他方、オオモンクロベッコウ、モンベッコウ(Pompilidae科)からα-及びβ-pompilidotoxin[Arg-Ile-Lys-Ile-Gly-Leu-Phe-Asp-Lys-Leu-Ser-Lys(β-はArg)-Leu-NH_2]を単離した。このペプチドの神経作用は今まで類例を見ないもので神経生理学者の注目を集めている。類縁体の合成に展開する。 (2) 先ず定説になっている活性型ビタミンDのA環の立体配座とVDR親和性[α-form【double arrow】β-form(活性型)]を指標とする様々な生理活性との関連を明らかにするためA環の2-位及び4-位にMe基を導入した1,25-dihydroxyvitamin D_3の各8種の全ジアステレオマーを合成した。又、現在注目を集めている前者の20-epi体も全8種合成した。合成はTrost法を採用し、A環前駆体enyneを汎用性の高い独自の方法を開発し合成した。2-メチルseriesのVDR結合能は、A環置換基の立体配置の違いで大きな差を生じた(10^5幅)。水酸基は天然型配置が活性が強く、特に2α-Me体のVDR結合能は1α,25-(OH)_2D_3(基準とする)の4倍、HL-60分化誘導能は2倍、Ca代謝調節能は4倍と増強した。A環修飾活性型ビタミンD誘導体で1α,25-(OH)_2D_3より強いVDR結合能を有するものとして史上初めての例である。更にその20-epi体はそれぞれ12倍、590倍、6.5倍という高活性を示した。一方、4-メチルseriesのVDR結合能は水酸基が天然型でも10^<-2>で、殆ど10^<-3>以下であり親和性がなかった。更に、D欠乏状態でのCa代謝調節能、各種の転写活性、アポトーシス制御能が調べられている。配座解析は[1α,2α-Me,β]体のX線結晶解析では1位OH基がequatorialのβ-formで存在するが、溶液中ではaxialであるα-form(/β-formは約2/1)が優先した。[1α,2β-Me,3β]体ではMe基がequatorialに近いハーフボートのβ-formが優先するようである。Me以外の2-置換誘導体、A環・側鎖同時修飾ハイブリッド、配座固定誘導体の合成が展開中である。 (3) (1),(2)の研究展開が目覚ましく(3)は一時中断した。[文中(1),(2),(3)は科学研究費申請実施計画に対応する]
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