研究概要 |
近年、キャピラリ電気泳動法がその優れた分離能により液体クロマトグラフィーに代りうる分離法として注目を浴びている。本研究では、アルゴンイオン(Ar)レーザー、ヘリウムーカドミウム(He-Cd)レーザーやダイオード(DIO)レーザー蛍光検出器に適した各種官能基(カルボキシル基、アミノ基、チオール基、水酸基など)に選択的でかつ適切な波長を励起波長とする標識試薬を検索し、生理活性物質の超微量分析に応用した。 Ar-レーザー(励起波長、488nm)には、Fluoresceine骨格(FITC等)を持つものや4-nitoro-2,1,3-benzoxadiazole骨格(NBD-F等)を持つものが波長特性、感度の面で優れていた。He-Cd-レーザー(励起波長、442nnm)では4-(N,N-dimethylaminousulfonyl)-2,1,3-benzoxa-diazole骨格(DBD-F等)が最適であった。これらのレーザー光源を用いると、吸光度法に比べて100倍以上高感度検出することができた。一方、He-Cdレーザー(励起波長、325nm)では、レーザーの出力が弱いが、吸光度法に比較すると一桁以上の感度向上が認められた。また、DIO-レーザーの発振波長630nm付近に励起波長をもつ蛍光性化合物はほとんどないが、検討した中では、シアニン系の色素が最適であった。しかし溶液中での安定性が悪いことや反応収率が低いなどが欠点であった。Ar-レーザーを使った応用としては、アミノ酸の光学異性体分離分析を行い、数フェムトモルのDL-アミノ酸を識別検出することができた。またHe-Cd-レーザーでの応用としては、細胞内生理活性チオールの高感度分析を行った。その結果、肝細胞内の生理活性チオール類(glutathione,cysteine,N-acetylcysteine,cysteinylglycineなど)を高感度で分離検出することができ、最も濃度の濃いglutathioneではラット肝細胞1個当たり、数十フェムトモルであることが明らかとなった。今後本法は、単細胞中の生理活性物質の高感度測定に応用できるものと期待される。
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