研究概要 |
胎児性胆汁酸生合成と先天生代謝異常症における生合成経路の解明を明らかにするために以下の項目を研究目的とした. 1) 胎児性胆汁酸生合成における中間体標品の合成 2) 胆汁酸生合成中間体の分析法の開発及び関連酵素の代謝産物の定量分析による生合成機構の解明 3) 各種先天生胆汁酸代謝異常症における胆汁酸組成の解明及び診断法への応用 上記目的のもとに平成9-10年度の2年間にわたり研究を遂行し,以下の結果を得ることができた. 1) 胎児性胆汁酸生合成における予想される中間体として,1β-及び6α-hydroxycholestanoic acidの合成を行うことができた.また,上記胆汁酸より生成が予想される24-水酸化体の合成も併せて行うことができた.さらに,生合成酵素の特異性を検討するために,各種cholestanoic acid誘導体も同時に合成し,それらのコエンザイムAエステルを簡便な方法により調整することができた. 2) 上記胆汁酸標品を用いて,HPLC,GC及びGC-MSを用いた微量分析法の開発を行うことができた.本法を利用して,胆汁酸生合成酵素であるhydroxyacyl CoA dehydratse/dehydrogenaseの代謝産物の分析を行い,その基質特異性(胆汁酸母核の水酸基数の相違,側鎖炭素数の相違)及び立体特異性(生成する胆汁酸側鎖の立体化学)について新たな知見を得ることができた.さらに,thiolase活性についてラット肝を用いて検討を行ったところ,steroid carrier protein 2がthiolase活性を有する可能性があることが示唆された. 3) 開発した分析法を用いて,各種胆汁酸代謝異常症と推定された患児体液中(尿,血液)の胆汁酸組成について検討したところ,胆汁酸生合成酵素の異常あるいは活性の低下によると考えられる症例を見いだすことができた.これらの酵素異常による特異な胆汁酸の存在は,肝疾患あるいは酵素異常症を診断する上で,的確なマーカーとなるものと考えられた.
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