研究概要 |
生後8-9日齢のWistar系ラットより嗅内皮質を含む海馬切片を切り出し、MEN50%,HBSS25%,馬血清25%の混合培地で2週間培養後実験に用いた。脳虚血のモデルとしてグルコース除去法及び興奮性アミノ酸添加法を用いた。前者ではグルコースの代わりに10mMの2-deoxyglucoseを含んだglucose-deficient HBSSに培地交換した。グルコース除去時間は1時間とした。グルコース除去後、48時間の回復期間をおいた後、プロピ二ウムイオダイド(PI,5μg/ml)により染色される死細胞を定量評価した。後者ではNMDA型グルタミン酸受容体の作動薬であるNMDAを短時間添加した(13-100μM,15min)。洗浄後24あるいは48時間後に、死細胞を定量した。1時間のグルコース除去により海馬CA1野選択的に顕著な細胞死が観察された。α,β-methylene ATP1mMをグルコース除去中、及び回復期間中共に添加しておくことによりCA1野における細胞死は抑制された。また、グルコース除去群に比べ、α、β-methyleneATP添加群では歯状回における蛍光強度がわずかに上昇しているものが観察された。なお、α、βーmethyleneATP1mM単独適用による影響は観察されなかった。NMDAへの15分間の暴露により、濃度依存的、また海馬内の部位特異的な神経細胞死が観察され、CA1野、CA3野、歯状回の順で重篤であった。そこで次に、このNMDA短時間暴露による神経毒性に対するATP及びプリン類(10μM-3mM)の神経保護作用を検討した。これらはNMDA暴露時間中のみ、NMDA処理後のみ、あるいはその両方の期間適用したが、これらプリン類はNMDAの適用による海馬神経細胞死に対して海馬内のどの部位においても抑制しなかった。本研究により海馬組織培養の系においてもプリンヌレオチドはグルコース除去による神経細胞死からの保護作用に重要な役割を担っていることが示唆された。
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