研究概要 |
我々は、生薬配糖体が経口投与された時,それら自身はほとんど吸収されず、腸内細菌により代謝活性化される天然のプロドラッグであることを明らかにしてきた。本研究課題では、これら配糖体の特性を手本とし、速吸収性の非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)および抗癌剤に糖を付加し難吸収性とし腸管下部にまで到達させ、そこで腸内細菌により活性化される、大腸炎および大腸癌ターゲッティングプロドラッグ創製を目的としている。 その試みとして、近年COX-2阻害、COX-2誘導抑制、IκB不活化抑制、抗酸化活性等で再評価されているサリチル酸に糖を付加し、難病指定されている潰瘍性大腸炎の治療薬としての可能性について検討を加えた。 サリチル酸グルコシド及びグルクロニドを合成し、これら化合物がアスピリンの先導化合物である柳の配糖体成分サリシンと同様、母化合物サリチル酸及びサリゲニンに比し難吸収性で、通常ラット及び無菌ラットを用いた実験により、経口投与後消化管下部、特に盲腸(大腸)、にまで到達すること、そこで腸内細菌によりサリチル酸及びサリゲニンへと代謝されることを明らかにした。合成サリチル酸グリコシドは経口投与後徐々に血中にサリチル酸が出現する徐放性のプロドラッグで、母化合物に比し胃障害性が著しく軽減されることを明らかにした。さらに、難病である潰瘍性大腸炎に病理組織学的に類似した炎症を惹起する、デキストラン硫酸誘発潰瘍性大腸炎モデルラットを作製し、ヒト潰瘍性大腸炎治療薬サラゾスルファピリジンと同様、サリチル酸グルコシドは体重減少、ヘマトクリット値減少、糞便潜血、盲腸粘膜層剥離等いずれの検査においても効果を示した。サリチル酸に糖を付加することにより副作用を軽減、さらに大腸送達性を獲得し、大腸で活性化される大腸炎ターゲッティングプロドラッグとなることが示唆された。 また、薬用人参主成分ジンセノサイドRb1配糖体が腸内細菌によりCompound Kへと代謝活性化されるプロドラッグであることを明らかにした。
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