研究概要 |
報告者らは本来一酸化窒素合成酵素(NOS)が存在しない血管平滑筋において,NOSが新規に合成されることを初めて見いだし,その後の研究によりこのNOSを発現する引き金はエンドトキシン(LPS)であることが判明した。昨年度の研究においては、まずLPSによるiNOS誘導の殆どの部分が内因性インターロイキン(IL-1)の発現を介したものであることを明らかにした。従って、final mediatorとして考えられるIL-1によるiNOS誘導機構を特にprotein kinase C(PKC)の観点から検討を行った。PKCはconventional(cPKC),novel(nPKC), atypical(aPKC)の3種の亜群に分類されるが、まず各群を選択的に阻害する薬物を使用して,どの亜群のPKCがiNOS誘導に関与するかを検討した。その結果,iNOS遺伝子の発現にはcPKCとaPKCが重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした。今年度においてはまずWestern blotにより,培養血管平滑筋細胞にα(cPKC),δ、ε,(以上nPKC),及びι,λ(aPKC)の5つのisozymesが存在することを明かにした。PKCαmRNAに特異的なantisense oligonucleotideを用いてこれをknockdownさせた時,iNOS遺伝子の発現は約50%程抑制された。同遺伝子の発現は非選択的なPKC阻害薬により完全に遮断されるので,残りの50%は,nPKCのいずれかであると考えられる。一方、ゲル・シフト・アッセイ法により定量したNF_<-κ>Bの活性化には影響を与えなかった。IL-1によりiNOS遺伝子はPKCα依存的かつNF_<-κ>B非依存的な経路を介して発現することが示唆された。
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