研究概要 |
ヒト肝から、アルド-ケト還元酵素ファミリーに属し、83%〜97%相同性を示す4種のジヒドロジオール脱水素酵素アイソザイム(DD1〜DD4)のcDNAが単離されている。しかし、これら4種のアイソザイムは生体内基質に対する特異性や活性調節因子の影響が異なる。また、最近、これら4種の各アイソザイムに類似のcDNAが複数単離され、遺伝的多型性があることが示唆されている。本研究は、各アイソザイムの機能分化に必須な構造を解析し、また遺伝子多型性とその臨床的意義を明らかにする目的で行い、以下の成績を得た。 (1) DD3は、既報の本酵素と3アミノ酸残基が異なる酵素(AKR1C3)と機能的には同一であり、ステロイド代謝酵素としてよりプロスタグランジンD_211-ケト還元酵素として機能することが示唆された。 (2) DDアイソザイムの部位特異的変異およびキメラ酵素作製により、基質および阻害剤と相互作用するアミノ酸残基および補酵素の結合や配向に重要な残基を示唆した。 (3) DD4はクロフィブル酸系高脂血症薬、2-アリルプロピオン酸系抗炎症薬および甲状腺ホルモンによって活性化され、その速度論的活性化機構と結合部位に関わる数アミノ酸残基を明らかにした。 (4) 報告されている13種の本酵素cDNAをRT-PCRとRFLPにより識別する方法を確立し、50生検試料を分析した。DD1,DD2,DD3に対応するそれぞれ一種類のmRNAの発現しか認められず、既報の類似cDNAは希な遺伝子多型かシーケンス分析の間違いであることが示唆された。一方、DD4には、約20%の頻度でヘテロに発現する2アミノ酸置換変異遺伝子を認めた。血液試料(137例)のゲノム解析家系調査により、この変異遺伝子を同定し、1例にホモ接合変異遺伝子型を認め、そのアリル変異の頻度は約9%であった。この変異遺伝子と疾患との関連はまだ明らかでない。
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