研究概要 |
出血性大腸菌O-157に感染し,溶血性尿毒症(HUS)を併発して,死にいたることがある.私はHUS併発の機序解朋のなかで,昨年度,出血性大腸菌O-157の産生するベロ毒素が内皮細胞で血栓形成を抑制するトロンボモジュリン(TM)の産生を遺伝子転写レベルで低下されると同時に,血栓形成を促進する組織因子(TF)の産生を誘導することを見出し,HUS発症の大きな一因となることを明らかにした.本年度はTFの遺伝子転写がベロ毒素によって,どのようにかく乱されているのかに的を絞り,合わせて,そのかく乱を取り除く予防および治療薬となる薬物を検索した. I. ベロ毒素による培養内皮細胞のTF遺伝子の転写促進機序 1. ベロ毒素によるTF発現誘導は,内皮細胞のベロ毒素刺激によって,P65/P50のへテロダイマーが形成されて転写因子NFκBを,c-Jun/Jun-Dのヘテロダイマーが形成されて転写因子AP-1を活性化し,活性化された両転写因子がTF遺伝子のプロモーター領域に結合して,転写を促進する機構によることを明らかにした. II. ベロ毒素によるTF遺伝子の転写促進を制御できる薬物の検索 1. レチノイン酸やcAMPはベロ毒素によるTFの発現促進を抑制することはなかった. 2. ベロ毒素によるTF遺伝子の転写促進は活性酸素除去剤で抑制出来なかったが,カレー粉の主成分であるクルクミンによって抑制されることを明らかにした.
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