研究概要 |
スギ花粉エキス+Al(OH)_3の投与によって感作したモルモットにスギ花粉を1週間間隔で定量的に長期間反復吸入させることによって鼻アレルギーモデルの開発を行ない,またその発症機構についての解析を行った. 1.実験的鼻アレルギーモデルの開発 (1)吸入4回目以降において,吸入1〜2および4〜6時間後をピークとする2相性の鼻腔抵抗の上昇がみられた。 (2)吸入3回目以降において,8回以上のくしゃみが即時性に認められた。 (3)抗原特異的γ1およびIgE抗体価は吸入回数依存的に上昇した。 (4)新たに考案した方法により惹起後に鼻腔内を洗浄すると,即時性のアルブミン漏出およびヒスタミン遊離ならびに遅発性の好酸球浸潤が認められた。 (5)感作動物はヒスタミンおよびロイコトリエンD_4の点鼻に対して,非感作動物に比して極めて低濃度から鼻閉を示す鼻粘膜過敏性を示した。 2.ヒスタミンに対する鼻粘膜過敏性亢進の発症機構の解析 (1)本過敏性は惹起回数の増加とともに増強し,また各反応惹起の4時間後には認められ,7日後には減弱した。 (2)本過敏性はメピラミンにより抑制されたが,アトロピンでは何ら抑制されなかった。 (3)感作動物におけるヒスタミンによる鼻閉は10分後にピークに達し,60分後には元のレベルにまで回復した。 (4)ナファゾリンは,感作-惹起動物においてヒスタミンによって発現する鼻腔抵抗の上昇を強く抑制したが,その程度は非感作-ナファゾリン処置群のレベルにまでは達しなかった。 (5)感作動物では,ヒスタミンにより鼻粘膜および管腔内に顕著ではないが有意な血漿漏出が認められた。 以上,ヒトの症状に極めて類似した実験的鼻アレルギーモデルが確立できた。ヒスタミンによる過敏性は,主として鼻粘膜の血管拡張反応が亢進する結果によることが明らかとなった。
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