研究概要 |
平成9年度には非受容体型チロシンキナーゼ系との,平成10年度には主として受容体型チロシンキナーゼ系との,GTP結合タンパク質系のクロストークに関する知見を得た. I. 細胞内情報伝達における非受容体型チロシンキナーゼ系とGTP結合タンパク質系のクロストーク-抗体受容体刺激によって起動するチロシンキナーゼ情報伝達系のプロテインキナーゼCによる修飾:cAMP増加はAキナーゼ活性化を介してCa2+動員を抑え、これがホスホリパーゼA2活性化の抑制の原因となる。cAMP増加によって活性化されるAキナーゼはPtdIns 3-キナーゼの上流も遮断し、活性酸素生成応答を抑えるものと結論された。また,Cキナーゼを活性化するPMAによる細胞応答の抑制について検討した。PMAで活性化されたCキナーゼはc-Cblのセリン残基をリン酸化し、この影響がc-Cblに会合している未知のチロシンキナーゼに波及し、その活性は抑えられる。 II. 細胞内情報伝達における受容体型チロシンキナーゼ系とGTP結合タンパク系のクロストーク-EGF受容体刺激に伴う新たなシグナル伝達経路の解明:インスリン受容体基質-1(IRS-1)のチロシン残基のリン酸化がEGF受容体刺激によって起こり,抗IRS-1抗体免疫沈降画分中のPtdIns 3-キナーゼの活性が受容体刺激に伴って上昇する,というこれまでに全く報告例のない知見を,ラット肝細胞を用いて得た.さらに,このEGF刺激に基づくIRS-1のチロシンリン酸化とそれに引き続いて起こるPtdIns3-キナーゼの活性化が,細胞内cAMP濃度の増大によって亢進されるという興味深い知見をも見出した.
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