研究概要 |
ラジオアイソトープ(RI)標識抗体のFabよびsingle chain FVフラグメントは癌の画像診断や内用放射線治療に有用であるが,腎臓への非特異的かつ高い放射能集積が,その臨床応用の大きな障害となっている. 申請者らは,RI標識抗体フラグメントが腎細胞へ取り込まれる前に,刷子縁膜酵素の作用で尿排泄性の放射性化合物を遊離すれば,腎臓への放射能集積を投与早期から大きく低減できると考えた.そこで,腎臓刷子縁膜酵素の1つカルボキシぺプチダーゼMの基質であるグリシン・リジン配列を介して抗体Fabフラグメントとメタヨード安息香酸と結合した(HML-Fab).本標識抗体のグリシン・リジン結合の開裂で生成メタヨード馬尿酸は,腎細胞へ再吸収されることなく,速やかに尿中へと排泄される. [^<131>I]HML-Fabと放射性ヨウ素で直接標識したた^<125>I-Fabとを実験動物に同時投与したところ,腫瘍への放射能集積に相違は見られなかった.しかし,[^<131>I]HML-Fabは速やかにメタヨード馬尿酸を遊離することで,腎臓への放射能集積を投与10分後から大きく低減し,腫瘍と腎臓との放射能集積比を投与3時間後で約5倍向上した.さらに,腎臓細胞内放射能分布の検討から,^<125>I-Fabは投与10から30分の間に膜画分からリソソーム画分へ放射能が移動したが,HML-Fabは両投与時間において膜画分にのみ放射能が検出された. 本検討から,HMLは低分子化抗体を用いる投与早期の画像診断,さらには内用放射線治療に有用と考えられる.また,腎臓近位尿細管刷子縁膜酵素の作用で低分子化抗体から尿排泄性の標識化合物を遊離するRI標識試薬は,腎臓の放射能集積を投与早期から低減することが明らかとなり,様々なRI標識試薬の設計に新たな指針を与えると期待される.
|