研究概要 |
医療の高度化と専門化に伴って,薬物治療における薬剤師の果たすべき役割は急激にその重要性を増して来ている.ここにおいて,医療現場が要求する人材を養成するべく,医療薬学大学院が設置された.しかし,そこでの教育における趣旨は,大学によってかなり異なっており,それがカリキュラムの違いに現れている.どの大学においても,病院における研修を義務づけているが,その期間はまちまちである.大学院終了後に,直ちに臨床薬剤師として活躍できるという意味では,修士課程の期間をフルに病院研修として過ごす方が効果的であろう.しかし,修士論文のテーマとして従来どおり実験研究を行う大学の場合は、病院研修は全く独立したものとなってしまい,修士課程の研究期間が短縮されただけ,との結果に終わるおそれもある.事前教育の充実など,各大学はそれぞれ工夫を凝らしているが,この方式が果たして「医療薬学大学院教育」として最適であるかどうかはまだ結論づけることができない.学内での事前教育の内容については病院研修内容との整合性を考慮し,さらに検討を重ねる必要性があると考えられる. 神戸薬科大学では一例,研修病院で薬剤師業務の研修を行うとともに,薬物相互作用に関する研究を行い,修士論文のテーマと一致させた場合があった.臨床薬学的活動の中から問題点として見いだされたテーマを,病院と大学が共同して解明にあたるという姿勢は、今後の研究と教育の有機的連携を図る上で,非常に有効なものといえるだろう.今後大学としては医療薬学大学院修了学生の就職先を積極的に開拓するとともに,研修病院との共同研究等を推進し,医療薬学大学院の評価を得るための努力を行う必要があると考えられる.
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