研究概要 |
パラコート(PQ)誘発wet-dog shake(WDS)を血液脳関門透過性調節の変化の指標として研究を行い、次の結果を得た。 (1)一酸化窒素(NO)及びオピオイド受容体について 非特異的NO合成酵素(NOS)阻害薬であるNω-nitro-L-arginine(L-NA)は、PQ誘発WDSを抑制したが、その異性体でNOS阻害作用の弱いD-LAには抑制作用は認められなかった。また、neuronal NOSに選択性の高いNOS阻害薬である7-nitroindazole(7-NI)もWDSを抑制した。L-NAおよび7-NIのWDS抑制作用は、NOの前駆体であるL-arginine(L-Arg)投与により全く影響を受けなかったが、オピオイド受容体拮抗薬であるnaloxoneにより消失した。一方、PQは、hippocampus(Hipp.)へ直接投与した場合に強いWDS誘発作用を示し、このWDSは、L-NAにより強く抑制された。Hipp.におけるNO生成は、PQにより増加し、それはL-NA前処置により消失、L-NAとL-Arg併用により部分的に回復した。しかし、このようなPQによるNO生成量の変動はWDSの発現が終了してから起こることが明らかとなった。このような知見から、PQ誘発WDSに対するNOS阻害剤阻害剤の抑制作用は、NO生成阻害ではなく、オピオイド受容体を介することが示唆された。また、N (2)バソプレッシン受容体(V1)について 非ペプチド性V1拮抗薬OPC-21268は、PQのHipp.投与誘発WDSに対して強い抑制作用を示したが、このような抑制作用は、ペプチド性V1拮抗薬であるdeamino-Pen1,O-Me-Tyr2,Arg8]-vasopressinには認められなかった。このことより、V1受容体のPQ誘発WDSへの関与は弱いものと考えられる。また、OPC-21268はV1拮抗以外の作用も有するものと予想された。
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