研究概要 |
これまではラット皮膚線維芽細胞(FR細胞)にSOD遺伝子を導入し,その分泌性を検討していたが,本年度はBaby Hamsterの線維芽細胞(BHK-21細胞)へのSOD遺伝子の導入をカチオン性リポソームを用いる方法により行った.FR細胞の場合と同様に分泌シグナルを保持しないベクター導入細胞では培養液中にSOD活性は観察されなかった.しかしインターロイキン-2(IL-2)の分泌シグナルを有するSOD遺伝子含有ベクターを導入した細胞では細胞培養液中に顕著なSOD活性の増大を認め,継続的にSODが分泌される細胞を作成した.従って導入する細胞株を変化してもIL-2の分泌シグナルを付加することで分泌性を付与することが可能であることを明らかにした.これらの成果をふまえて,ヒト線維芽細胞へのこれら遺伝子の導入を検討している. またこのBHK-21細胞を用いて細胞内外に活性酸素を生成させ,細胞増殖性,生存性への影響を検討した.各種活性酸素刺激において活性酸素消去酵素系(SOD,グルタチオンパーオキシダーゼ等)の酵素活性や増殖性が生成する活性酸素の種類により変動することを認めた.そこで細胞内に活性酸素を生成するヒドロキノンを低濃度で処理した場合,ヒドロキノン単独では著明な増殖作用は観察されず,高濃度では生存性が低下することを認めた.そして線維芽細胞増殖因子(FGF)を培養液中に添加した場合,FGFの細胞増殖作用を低濃度のヒドロキノンが増強することを認めた.現在,分泌性を保持したEGFを発現するベクターを同じくBHK-21細胞に導入し,その増殖性と活性酸素刺激への対応性について検討を行っている.
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