研究概要 |
我々は、血小板内微量RNAからトロンボキサンレセプター(以下TXA_2R)、プロスタサイクリンレセプター(以下PGl_2R)mRNAを増幅し、定量的測定法を開発した。本研究は、まずポリメラーゼ連鎖反応(以下PCR)を用い血小板内のmRNAからTXA_2RとPGl_2 RのmRNAを増幅し、エチジウムブロマイド染色、そしてPCRサザン法により両者の存在を確認した。さらに、今回定量的に測定するためELISAを一部修正し独自に開発したリジンプレートハイブリダイゼーション法を用い、クローニングしたTXA_2RおよびPGl_2RmRNAを用いてエチジウムブロマイド染色やPCRサザン法など従来法と感度、特異度を比較した。その結果、エチジウムブロマイド染色、PCRサザン法、リジンプレート法の検出感度はTAX_2RmRNAについてはそれぞれ500pg,500pg,50pg/50μl,PG12Rは、100pg,50pg,5pg/50μlであった。また、特異度は、リジンプレート法が非特異的な増幅産物と反応することなく最も高かった。さらに、リジンプレート法を用いてヒト血小板検体について検討した。対象は健常人20例で血小板TXA_2R、PGl_2RmRNAの発現量を検討した結果、TXA_2R、PGl_2RmRNA発現量の平均は、それぞれ274.4±214.9pg/50μl、386.9±255.6pg/50μlであった。また個々のTXA_2R、PGl_2RmRNAの割合はTXA_2R/PGl_2R=0.0075〜2.3と個人差はあるがTXA_2Rの著しく高い例はなかった。以上より本法によるTXA_2RとPGl_2RmRNAの定量は、血栓危険因子であるTXA_2Rと抑制因子であるPGl_2Rの遺伝子レベルでの発現量を把握することが可能で血栓性疾患患者での測定は、血栓症の病態解明あるいは予防、診断につながることが期待される。また、測定面からみると本法は、操作工程が簡便かつ迅速で、客観的、定量的に多数検体を処理でき、キット化したRNA抽出とELISA系を組み合わせることにより測定工程の全自動化に大きな期待がもたれる。
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