研究概要 |
本研究は牛肉の長時間加熱がペプチドの生成量および呈味にどのような影響を及ぼしているのかを明かにしたものである。牛肉はオーストラリア産スープ用冷凍肉を用いた。加熱の方法は牛肉を真空パックし10倍量の水中で加熱する方法(真空パック加熱)と牛肉に10倍量の水を加えて加熱する方法(スープ加熱)の2種類とした。加熱時間は1、3、6、12、24時間とし、真空パック加熱では牛肉エキスを対象とし、スープ加熱では牛肉スープを対象とした。呈味成分として5′-IMP、遊離アミノ酸、ペプチド、還元糖、乳酸を測定した。その結果を以下に示す。 1. 牛肉の呈味成分の生成量は加熱方法によって異なっていた。すなわち、5′-IMPとペプチドは真空パック加熱法の方がスープ加熱法よりも多量に生成したが、乳酸や還元糖の生成量は加熱方法に影響されなかった。 2. 牛肉スープの呈味成分量は12時間加熱でもっとも多かった。とりわけ5′-IMP量とペプチドの生成量が多かった。 3. 官能検査により牛肉スープの呈味を加熱時間ごとに比較したところ、12時間加熱スープの呈味が1,3、6,24時間加熱スープに比較して甘味、うま味、こく、好ましさでより強く有意差があると認められた。また、24時間加熱スープの呈味は1、3、6、12時間加熱スープに比較して甘味、うま味、こく、持続性、まろやかさ、好ましさで弱く有意差があると認められた。 4. 12時間加熱牛肉スープの呈味の評価がもっとも高く、好ましいのは長時間加熱によって、5′-IMPとペプチドの生成量が多く、呈味成分中のペプチドの割合が大きいことが一つの要因と考えられた。
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