研究概要 |
5種の糖アルコール(Erythritol,Xylitol,Sorbitol,Maltitol,Lactitol)と3種の糖類(Glucose,Maltose,Lactose)を、単独或いは1対1に混合してスポンジケーキ中のスクロースに代替した場合に生じる諸現象を、バッターの性質、焼成工程における温度履歴、形成されたスポンジ組織の物性として捉え、バッターの性質やスポンジ組織形成における糖類の影響について追求した。また官能評価を行って、ケーキの機械的な物性と感覚との関連についても探求した。 1. 溶解度の低い糖を含むバッターは比重が大きくなる傾向にあり、気泡の安定性が劣ると判断される場合が多かった。また、バッター比重とケーキ比容積の間には、負の相関が認められた。 2. バッターの示差走査熱量測定により得られた吸熱ピーク温度(以下バッターTp)は、糖の分子量にほぼ対応する高さを示し、ケーキ生地の硬化温度を表すと考えられた。ケーキ焼成中の昇温速度や最高到達温度とバッターTpとの間には正の相関が認められ、収縮開始時間とも関連していた。またケーキ比容積とバッターTpの関係は、Tpが88℃付近に最大値を持つような2次曲線で近似できた。バッターTpとケーキの温度履歴や比容積の間に見られた関係から、糖の代替はバッターTpを変化させ、ケーキの温度履歴に影響を与え、ケーキの硬化時期や蒸気圧の強さを左右し、その結果として膨化の程度、即ち比容積に影響すると推察できた。 3. 糖の組み合わせによって、多様な物性と触感を持つケーキが得られた。糖アルコールを含むケーキは概して砕けやすく凝集性が低くなったが、キシリトールは例外であった。還元糖と糖アルコールを混合した場合に、スクロースケーキ類似の物性を示すケーキが得られた。感覚的なやわらかさは、圧縮応力よりもケーキ比容積の大きさと関係することが分かった。
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