研究概要 |
本研究は各種食品素材に含まれる血栓溶解酸素を,申請者らが考察したマイクロチューブを用いた血栓溶解アッセイとフィブリノーゲンザイモグラフィーを用いて検索し,強い活性が認められたものについては,その性質ならびに経口投与した場合の体内への取り込み,調理・加工過程での活性の消長を検討することを当初の目的とした。 200種類に及ぶ食品素材について活性の検索を行ったところ,申請者は,すでに報告のある納豆のほかにキノコ類にきわめて強い活性が存在することを見出すことに成功した。1,10-ファナントロリンが強い阻害効果を示したことから,この活性はメタロプロテアーゼ由来であることが明らかとなった。マイタケ由来の活性が強い耐熱性を示したことから,活性について加熱・調理過程での消長を詳細に検討した。その結果,90℃加熱でも短時間なら活性が残存することを認めた。また,加熱調理法では「炒める」がもっとも適していることを見出した。 一方,マイタケ由来の血栓溶解酸素の精製は,おそらく本酸素が等電点の多様な糖タンパク質と複合体を形成していることから,通常用いられるイオン交換体が有効でないため成功に至らなかった。しかし,分子篩クロマトグラフィーの結果から,本酸素分子の本体は約2万と比較的低分子量であることが明らかとなった。当初の研究予定では,精製標品に対する抗体を作製し,動物実験により経口投与による血中への取り込みを検討する予定であったが、完全精製に至らなかったため,マイタケ抽出液全体に対する抗体を作製し,ラットを用いて取り込みを検討したが,明瞭な取り込みを示す結果は得られなかった。最近になり分子量,酸素的性質から考えて本酸素と同一と考えられるタンパク質が理化学研究所のグループにより分離・精製され,そのアミノ酸配列が決定された(J.Biol.Chem.,272,30032-30039(1997))。そこでその配列をもとにPCR法により酸素タンバク質をコードする領域をクローニングすることに成功した。この結果,今後,大腸菌を用いて本酸素の組換え大量生産する途が拓かれた。
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