研究概要 |
「死ぬまで元気で生き甲斐を感じ、自己実現を目指す生き状(ざま)」これこそが人間の幸せ、ひいて高齢者の幸せであろう。しかし実際には日本では相変わらず独居老人の孤独死・自殺死が多い。徳島県の地域別、65歳以上高齢者の自殺死・孤独死の検視資料をもとに、過去31年間(1977〜2007)の時系列的考察を行った。'77年度は孤独死12人、自殺死44人、'06('07)年度には孤独死179(160)人、自殺死45(62)人と、孤独死は15倍、自殺死は横這いに推移している。本研究期間平成9,10,11年度の自殺死・孤独死率をみると、'97年度は両率共に4.0/万人、'98年度についても両率共に4.6/万人、'99年度からは孤独死率は5.3/万人と増加し、以降も急増傾向を示す。自殺死率は3.4/万人と減少し以降も漸減に推移する。ここで独居老人への聞き取りで分かった現実から独居老人、特に後期高齢者男性の食環境と孤独死に注目したい。また「独居老人が衰弱した」との連絡で直ちに市町村の福祉が「入院手配に」動くのでは、「生の極限まで自宅での独居を護る人の最期を本人の選択(元気であった時の気持ち)にゆだねる」このプロセスづくりが最優先であると考える。一方策として「ソーシャル・サポート・ネットワーク」の中で育んでいく介護保険制度の創造がある。住み慣れた地域の、自分の足で歩いていける範囲に、徳島県の地理的特性(一級河川が4本もあり、水と緑と太陽、清らかな空気とお接待の心あふれる人情)と第1号被保険者1人当たりの保険給付費が、他都道府県に比べて突出して高いという地域特性。これを効果的に活用することも考慮(但し保険料はこれ以上高くならずに)して、孤独死撲滅に結びつけたい。人生の最終章を、より良い死の姿で、静かに受け容れて旅立つさまを、最後の贈りものとして逝くものでありたい。日常生活では「生老病死」を常に身近に感じ合いながら共に生きる姿勢を啓発し、孤独死で生涯を閉じることがないように支え合う。
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