研究概要 |
平成9年度から本年にかけて,リズミカルな運動やボディワークが心身の活動にどのような影響を与えるかについて,特に今回はリズミカルなボディコンタクト(撫でる,たたく,揺らすなど身体のふれあい)を対象として実験的に考察を試みた. スポーツなどのダイナミックな身体活動の中で,ダンスは個の自然な表現や表出を促すことができ,また同時に競争というより他者許容的(連手・腕や肩を組むなど)である.近年注目されはじめたダンス・ムーブメントセラピーもこのような運動特性や関係性が理解されたことによるといえよう. 3年間の実験的検討を通して,このような活動が心身に与える影響は以下のようにまとめることができよう.なお,この間新しい課題も見出されており,さらに研究を継続したいと考えている. 1.心拍数・呼吸数の変化:自律神経系活動としての心拍数(R-R間隔も含む)や呼吸数は,撫でる・揺らすなどのボディワーク後に著明な減少傾向を示した.すなわち,ボディワークを受けることによって交感神経系の興奮が抑制されることが示された. 2.脳波変動:ボディワーク後はα帯域のピーク周波数が低下し,さらにボディワークによってα1波の増大領域が拡大した. 3.プリファード・テンポ(メンタルテンポ)の変化:指タッピングによる快適動作速度は,ボディワーク後に遅くなる傾向が示された. 4.パーソナル・スペース:ボディワークを受けた後の他者との快適空間は拡大する者と縮小する者があった.拡大した者は「気分がよくなったので,空間を大きく動きたかった」と述べ,縮小した者は「人に近づかれても平気になった」と述べた. 5.過食症のグループ療法の結果:ボディワークを通して「自分を大切にそして優しく受け入れる気持ちが高まり,他者との交流が楽になる」という強い効果が認められた.
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