研究概要 |
本研究では,肥満度の決定における骨格筋の筋線維タイプ特性の役割を明らかにするために,三つの実験を行った。まず実験1では,遺伝的肥満のモデル動物であるツッカー(Zucker)肥満ラットから摘出した骨格筋の筋線維タイプ特性と,肥満を呈さないコントロールラットの骨格筋の筋線維タイプ特性を比較した。得られた結果は,全筋当たりの活性で表した場合,ツッカー肥満ラットの骨格筋の酸化能力はコントロールより低いこと,およびその低値は骨格筋重量の減少に起因することを示した。次いで実験2では,高脂肪食で飼育したラットと普通食で飼育したラットを用いて,内臓脂肪重量,骨格筋の代謝特性および全身の代謝の相互関係を検討した。そして,普通食で飼育したラットにおいて,内臓脂肪重量と骨格筋の酸化能力の間に有意な負の相関を認めた。一方,高脂肪食での飼育では,骨格筋の酸化能力自体はを高進するが,それにもかかわらず肥満を避けることはできないことを明らかにした。実験3では,骨格筋の酸化能力を高進させ内臓脂肪の蓄積を抑制することが知られている回転ケージでの自発走トレーニングをラットに負荷した。そして,そのような局所における変化が全身の安静時代謝率あるいは呼吸交換比の変化をもたらすか否かを検討した。得られた結果は,自発走トレーニングは骨格筋の酸化能力を高進させ内臓脂肪の蓄積を抑制するが,安静時代謝率および呼吸交換比のいずれをも変化させないことを示した。
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