研究概要 |
1. 出羽国絵図の年代推定と作成目的に関する研究 出羽国絵図の所在を確認し,1点ずつ年代推定を行った結果,158点の出羽国絵図を確認することができた。この点数は国別現存点数として出羽国が最も多いことを示しており,また享保国絵図は作成していないとする従来の見解に対して,秋田藩と米沢藩では享保期にも国絵図を作成していたことなどを明らかにした。加えて,関連文書の所在確認を行い,小野寺淳は秋田藩・鶴岡藩・米沢藩における出羽国絵図の作成過程を解明した。 2. 出羽国絵図に描かれた空間表現の研究 出羽国絵図を中心に,各地に残る国絵図との異同も視野に入れて,江戸幕府撰国絵図から信仰に関する表現や水上交通に関する表現の研究を行った。分担者の一人岩鼻通明は「国絵図にみる霊山の表現」を考察した。渡辺英夫は秋田藩の文書を収集し,「出羽国絵図にみる交通情報」について考察した。 3. 画像処理による出羽国絵図の研究 国絵図は,現地調査の野図,下図,幕府伺いの内見図,幕府に納められた清絵図の控図,さらに様々な写本が現存している。これらの現存する絵図が,内見図か控図か,下図を踏襲しつつどの点を修正したかなどを明らかにするために画像処理を導入した。この結果,国境が微妙に異なる点などを明らかにし,作成過程を正確に把握することができた。 今回の調査によって,はじめて出羽国絵図の全容が明らかになったが,いまだ写真版が少なく,主要な絵図の分析に止まった。この点を今後の課題としたい。 日本国際地図学会第33回地方大会(仙台)平成10年10月24日に本研究の成果の一部として,小野寺淳は「出羽国絵図の作成過程ー鶴岡藩を中心にー」を発表した。
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