研究概要 |
本研究の主目的は,日本の主要都市に関して都市成長を金融機能の側面から解明しようとするものである. 日本においては,金融機能とそれによる都市類型からみても,大都市圏の中核的な大都市,大都市の副次的中心都市,広域中心都市,県庁所在都市そして地方中心都市など,主要な都市に限っても,都市階層,あるいは資金流動を考慮に入れると都市システムが厳存する. 大都市圏の構造変容にも,金融機能は,当然,作用することが解明された.大都市圏の過程において,郊外化が進行するが,まず預金額が中心都市周辺部で増加する.次の段階として,郊外都市の自律化が進み,郊外核が形成されると,貸付機能が拡充し,その結果,預貸率の上昇が進行する.このような金融機能による大都市圏化の進展は,人口増加のそれに比較して遅行する傾向があることも見い出した. 金融機能は,当然,経済情況にも大きく影響を受ける.好況期であった1960〜1990年までは,全国的にみても貸付・預金機能とともに預貸率が平準化する傾向があった.しかし,不況期である1997年においては,東京と東京大都市圏に資金が集中するようになり,「東京の一極集中」が強化された.そして,全国的にみて都市間格差が顕著になった. 経済不況期には貸付機能が特定の都市に集中することは,筆者らは過去の研究で指摘しているが,1997年の不況期において,預金額も東京一極集中的な傾向を示したことを見い出した.
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