研究概要 |
タフォニとは,風化作用によって岩石内部の物質が除去されて生じた小規模の穴状の地形で,乾燥・半乾燥地域や海岸地域などで観察される.従来,タフォニの形成には,風食や波食作用がかかわると考えられてきた.本研究では,海岸地域のタフォニの事例として,松島湾北部(奥松島),房総半島南西岸,および紀伊半島南岸に発達するタフォニを取り上げ,その形成要因,形成条件,発達速度などを現地における通年観測をもとに分析した. 分析は主として奥松島を対象に,1)タフォニの形態計測と剥離物資の粒度分析,2)ペンキ塗布法によるタフォニ内壁の剥離面積測定とタフォニ底に堆積したrock mealの重量測定、3)タフォニの形成にかかわると推測される条件(岩盤温度,斜面含水量,気温,湿度,日射量,卓越風向など)のモニタリング,4)タフォニを構成する岩石の理化学的性質(物理的・力学的性質・鉱物組成・溶出特性)などについて行われた.この結果,タフォニは楕円体を半分に割ったような形態を呈し、汀線からの距離や発達高度が大きくなるとそのサイズが小さくなる傾向を持つことがわかった.また,タフォニの剥離物資はおもに寒候期に多く生産される傾向が認められ,タフォニの発達速度は,10^2〜10^3年であると推測された.一方,タフォニ壁面では,寒候期に塩類(Halite,Bloedite)の析出することがX線解析分析の結果明らかとなった.またモニタリングの結果は,寒候期にタフォニ壁面の含水比が低下し,壁面が乾燥状態にあることを示した.タフォニは沿岸部に発達するため,これら塩類は,海水に含まれるNa^+,Mg^<2+>,Cl^-,SO_4^<2->などのイオンがタフォニ壁面に付着し,乾燥した寒候期に析出したものと考えられた.すなわちタフォニは,壁面に供給された海水飛沫による塩類の析出によって内壁が弛緩し、発達する.
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