研究概要 |
オゾン層破壊の問題の持つ本質を多くの生徒が理解できるようにするために,紫外線が生物に与える影響を中心に取り上げ,生物を使って紫外線を探知する方法や生物に与える紫外線の多様な影響を調べた.紫外線源の10W殺菌灯ランプから30cmの距離で試料が受けた紫外線量による影響の結果は以下のとおりである. 1. バナナの果皮は2,3分紫外線照射した後暗所に室温で保つと,褐色に変色する、この現象は紫外線を探知する優れた方法で,紫外線源と果皮の間にいろいろなものを置き紫外線の透過性を調べることができた. 2. Saccaromyces属の酵母細胞は1分間の紫外線照射によって約99%死ぬ.これを基に,紫外線の強さを探知できる.また,紫外線照射後可視光線照射すると光回復が見られ,回復の程度を数量的に示すことができる.紫外線による突然変異の現象を知るための良い教材となることが分かった. 3. ヒメウキクサの葉状体は1回の20分以上の紫外線照射によって,それ以後の通常の光条件下での培養において葉状体の数の増加が抑制されることが分かった.また,クロロフィルの退色が徐々に進行し,40分以上の1回の照射で培養後4日以後には白色になった.これらの結果から紫外線の光合成への影響が確認された. 4. アフリカツメガエルの受精卵へ,1回の50分以上の紫外線照射によって卵割の異常が起き,36時間後の生存率が急激に低下した.70分以上の照射では生存率の低下が進み,生存個体に形態異常が多く観察された.これらの結果から両生類の胚発生に長時間の紫外線照射は大きな影響を与えることが分かった. 5 紫外線に対する生物の防御についても考察し,環境教育用の実験手引書の作成を行った.
|