研究概要 |
本研究では、図形の性質を見いだす手法を育成すること、そして、その力を評価するための指導方法として、生徒に図形の問題をつくらせる活動を取り入れた「発展的な指導法」を採用する。本研究の目的は、発展的な指導法によって図形の性質を見いだす能力を育成し、そのための適切な原題を開発すること、そして、中学校数学科における図形領域の各単元にわたり、原題を使用したときの指導内容と指導過程を実証的に明らかにすることである。そのために2年間の研究期間に8回の授業を実践した。それらの授業を通して原題の発展性を調べることができ、また、授業を行うにあたってのおおよその指導過程をつくることができた。図形の性質を見いだす手法を育成すること、そして、その力を評価するための原題として、次の問題が適切であることが分かった。これらの問題に関しての発展性およびそれらを指導することを通してどのような発見的な考え方の指導が可能かについては研究報告書にまとめてある。図形領域の各単元におけるモデルとなる原題は次のものがある。 平行線の性質に関しては、「平行線の同側内角の2等分線は直交することを証明せよ。」を原題とすると、オープンエンドアプローチにおける数学的な活動を授業に自然に取り入れられることが分かった。三角形の性質に関しては、「二等辺三角形ABCの等辺AB.ACの上にそれぞれ点E.Dをとり、∠DBC=∠ECBとする。このとき、四角形AD=AEであることを証明せよ。」が演繹的な考え方の初期の指導に適切であることが分った。四角形の性質に関しては、「平行四辺形ABCDの対角線BD上に点E,Fをとり、∠BAE=∠DCFとする。このとき、四角形AECFは平行四辺形であることを証明せよ。」が問題をつくる手法を広げる指導をするうえで適切であることが分かった。また、「長方形ABCDの辺BCの中点をMとし、AMとDCの延長との交点をEとする。このとき、AM=MEを証明せよ。」は数学的な考え方を指導するうえで適切であることが分かった。
|