現代社会は、正に「技術」の上に成り立っているといっても過言ではない。その「技術」と生活との関わりを学習させる技術科教育では、「技術」を我々の生活に便利さや快適さをもたらす「陽の側面」からのみ捉え、「技術」が引き起こす「陰の側面」に対する視点が抜け落ちている。たとえば、河川改修やフロン問題などにおいて見受けられるように「自然との調和」に欠けたことに起因する弊害が数多く生じている。 本研究では、「自然と共生する技術」という視点から見た技術科教育の一教材として『水制(河岸から河心に向けて突き出た土手状の河川工作物)』をとりあげ、その技術科教育における位置づけや意義について考察した。 研究成果については、以下のように要約できる。 1. 伝統的河川工法としての『水制』およびその技術史に関する文献調査、ならびに日本各地で試行され始めている水制工の実地調査に基づき、目標分析などを経て、「自然と共生するという視点」からの教材化を図ると共に、技術科教育における位置づけおよび学習指導案について考察し、実験授業を実施した。 2. 『水制』の基本的な構造、ならびに模型による水理実験から水制の働きや機能を生徒たちは容易に理解できた。そして、『水制』についての生徒たちの様々な調査活動とプレゼンテーションを通して、『水制』を「コンクリート三面張り」と比較させることにより、自然の材料や自然に逆らわない工法について技術的観点から考察させることができ、「自然と共生するという視点」の重要さについて気付かせることができた。
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