研究概要 |
現在,日本では原子力発電所が52基稼働しており,総発電量に対する電力供給源としての核エネルギーの割合は大きなものになってきている。その結果生じる放射性廃棄物の運搬・処理,その安全性についての議論が常になされている。21世紀のエネルギー資源と環境の問題を原子力に関する課題と関連させて対処していく世代は今の,これからの子供達である。しかしながら,特に中等学校における理科の内容と授業時間の削減がされてきており,益々,原子力・放射能・放射線について学ぶ機会が少なくなっている。そこで,本研究代表者等は(1)小.中・高等学校で児童・生徒が原子力関連概念にどのような意識・知識をもっているのかを調査・分析し,(2)小.中・高等学校の児童・生徒が「自分で」・「容易に」・「楽しみながら」・「工夫して」・「安全に」扱える教材を検討したので,その概要を述べる。 (1)の意識・知識調査については,(1)小・中・高・大学生に対しての年齢別調査と(2)徳島県を中心に広島・長崎・福井県にまたがる地域別調査を行った。(1)の調査では原子力関連概念の知識が学校教育で学ぶ場がないため,年齢に関わりなく原子力関連概念についての知識は究めて乏しいことが分かった。一方,科学的な正確な知識でなく漠然とした原子力・放射能・放射線に対する意識・イメージは実に豊富でおおむね,原子力・放射能についてはマイナスイメージ,そして放射線についてはプラスイメージであることが分かった。彼等に強い影響を与えている情報源はマスメデアでその中でも映像型メデアが圧倒てきである。地域別では広島・長崎は平和教育が学校でなされており,他地域と較べて知識が少し多くなっている。原発のある福井・敦賀市と徳島地域の比較では前者が,展示館等の影響もあり知識の量も増えている。いずれにしろ,学校教育での学ぶ場を設定することで,彼等がこれらに関する基礎知識を得ることは可能である。(2)の彼等が使用する理科教材として,身の回りのものを用いることを重視した。 (1)自然にある御影石等からの放射線で写真フイルムを感光させ,自然と日常の環境には常に放射能を有する物質が存在することを確かめる装置の開発 (2)プラスチックのコップ等で制作する簡単な霧箱を試作した。ひとり一人の児童・生徒が作成可能で線源に自然の石や砂を使うことができる。
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