研究概要 |
1.研究計画書にあるように,本研究課題では探索的因子分析モデルを想定している.因子分析では,大標本のときはしばしば適切そうなモデルが棄却される.通常,想定した因子分析モデルが棄却されると因子の数を増やすことが行われ,その際,不適解が発生してしまいうまく解析できないことがある.このような問題が起こったとき,元のモデルに戻って棄却されたモデルでも採用すべきがどうかという問題を研究するのがこの研究課題の意味するところである.そのためには不適解の性質に着目する必要がある.ここでの成果は,不適解の原因についての新しい切り分けを提案し,多くの実例でその切り分けの重要性を確認したことである.本研究成果は平成10年7月にイタリアで行われた国際分類学会で招待講演として発表された. 2.因子分析では,大標本のときはしばしば適切そうなモデルが棄却される.その理由として,モデルに合わない変数が分析変数に含まれていることがある.ここでの成果は,適合度という観点から,モデルに合わない変数を同定する新しい方法論の導入である.本研究成果は,計量心理学会の国際誌Psychometrikaに掲載予定である. 3.新しく開発した方法をプログラム化しSEFAを称した.プログラム言語としてJavaを用いWWW上でこの新しいプログラムを公開した. 4.平成11年度の日本心理学会においてSEFAによる分析についてワークショップを開催し,さまざまな応用事例を通して,SEFAの有効性について議論した.ワークショップでは入場できない参加希望者が相当数いた.変数減少法と変数増加法に基づく因子分析の変数選択法が議論された.末期癌患者の自己効力感の因子構造分析やSD法データの因子分析が紹介された.探索的にモデルに合う変数を探すときは変数減少法が適切であり,いくつかコア変数(分析から外せない項目)がある場合は,それらからスタートして変数を増やしていく変数増加法が望ましいことが示された.
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