研究概要 |
極値理論の応用として,ステレオロジーの分野で典型的なWicksell小球問題について研究した. ランダムな大きさの球が空間にランダムに配置されていて,観測可能なのは検査平面上の球の切断円とする.このとき与えられた体積中の最大球の大きさを予測したい.空間の球の大きさの分布の平面上の切断円の大きさの分布への変換をWicksell変換,検査平面上のデータの従う分布をWicksell変換分布と呼ぶ. 次のような研究成果を得た. 1. 空間の球の大きさが3母数未知の一般ガンマ分布に従うモデルの下で,与えられた体積中に含まれる最大球の大きさを予測する問題を考えた.このとき,一般ガンマ分布のWicksell変換分布のパラメータを推定する必要がある.この推定が難しいことを,Fisher情報行列を数値計算することにより示した.また.推定を行うとき最尤法は上手く行かなかった.そこで,モーメント推定量の漸近分散を計算し,実用的な推定方法を提案した. 2. 空間の球の直径の従う分布の右裾が指数分布で近似できる場合に,与えられた体積中の球のreturn level(それ以上の球は平均1個となる値)を予測する問題を考えた.平面上の切断円の上位r個の観測データに基づく予測法を構成し,その精度をシミュレーション実験で調べた.rの決定方法としてはロバスト回帰に基づく方法が良いことがわかった.しかし,return levelは非常に小さな確率の上側確率点に相当し,予測の精度はあまり良くないことがわかった. また,分布の裾の新しい統計解析について.神戸湾の潮位データに適用しそれらが裾の重たいPareto分布で近似できることを明らかにした.
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