研究概要 |
本研究は,従来のモデル選択理論をより体系化するとともにニューロネットワーク,ウエーブレットなどこれまでの伝統的な推測法と異なった側面をもつ計算機依存型の推測法に対しても適用可能な形に拡張し,十分実用に耐える根拠と効力を持つ汎用なモデル選択法を確立することを目的として開始した研究である. まず最初の目的は,Springer-Verlag社から依頼されていたモノグラフ"Statistical Model Selection"の執筆を通じて1つの体系的なアプローチを探索することによりかなり達成できた.特に,BICやABICさらにはMDLに代表されるモデル選択法をベイジアンの立場から統一的に扱うことが判明したことは,今後のこの分野のさらなる発展につながるばかりでなく,ニューロネットワークのノード数の選択などに無反省にこれらの方法が適用されている現状に対する警鐘としても重要な意味を持つ結果である. 二番目の目的に対しては,主に離散データに対する統計モデルの選択を中心に研究を進めた.多くの計算機依存型の推測法がこのような離散的な値をとるデータを対象としているからである.その結果,連続的な値をとる場合によく用いられるAICに代表されるモデル選択法をそのまま用いるのは必ずしも適切でないことが明らかになった.その主な理由は,離散分布の場合には推定量の分布の漸近分布への収束が極めて遅く,また一様ではないためである.そこでどんな修正が適当かを探索するとともにそれぞれについて検証を重ねた.その結果いわゆるブートストラップ法による修正項の推定がかなり広範囲に有効であることが判明し,そのために必要なアルゴリズムも開発した. さらに,実際問題への適用例として従来から研究対象としてきた7種類の金利時系列を取り上げ,多変量ARモデルのモデル選択の実証研究を行った.そのためには,変量とラグの自由な組合せでのモデル選択を行えるソフトウエアが存在しなかったためその開発から始める必要があった.このソフトウエアを用いて様々な期間についてモデル選択を行ったところ,バブルの時期も含め様々な期間について共通がモデルを選択できることが判明した.これは実際問題での統計的モデル選択の重要性とその有効性を示す結果である.
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