研究概要 |
本研究では,木,直並列グラフ,部分k-木等の構造的グラフに対し,彩色問題,素な道問題,グラフ描画問題を取り上げ,個々の問題に対して効率のよいアルゴリズムを設計するばかりでなく,構造的グラフに対する効率的アルゴリズムの統一的設計法の研究開発を行った. まず,部分k-木に対しては,辺彩色問題を一般化した[g,f]全彩色問題を解く多項式時間アルゴリズム,辺素な道問題をある特定の条件下で多項式時間で解くアルゴリズム,点ランク付け問題を多項式時間で解く逐次アルゴリズム,O(log n)時間で解く並列アルゴリズムの開発に成功した.また,部分k-木の辺素な道問題を見つけそのNP-完全性の証明にも成功した. 木に対しては,一般化ランク付け問題をO(n^2logΔ)時間で解くアルゴリズムを与え,また平面グラフ上で“非交差"なスタイナ林を求める問題を,すべてのスタイナ木の端子が2つの面にしかないとき,O(n log n)時間で解くアルゴリズムも与えた. 直並列に対しては,辺彩色問題を線形時間で解く逐次アルゴリズムを与えるとともに,O(Δn/log n)台のプロセッサーを用いてO(log n)時間で解く並列アルゴリズムを与えた.どちらのアルゴリズムも計算時間は比例定数の範囲内で最適である. また,グラフ描画アルゴリズムでは,平面グラフの3種類の描画を求める線形時間アルゴリズムを設計するとともに,グラフの凸描画問題に応用することができるグラフの分解法も与えた. 本研究では,2年にわたり構造的グラフに対する効率的アルゴリズムの統一的設計法の開発を目指し研究を行ってきたが,これまで様々な問題に対するより高速なアルゴリズムの開発に成功しており,一般の辺素部分グラフ分解問題に対する効率のよいアルゴリズムの統一的理論構築のための基盤作りに十分な成果をあげることができた.
|