研究概要 |
本研究では、偏微分方程式を不規則な構造をもった格子で離散化した線形方程式の解法を研究し、併せてその並列計算機上への実装を研究した。 1) Bi-CGSTAB法の前処理 本研究ではマルチグリッド(MG)法を前処理として用いるマルチグリッド前処理付Bi-CGSTAB(MGBi-CGSTAB)法を、不規則な構造の有限要素法によって離散化した移流拡散方程式に適用し,数値実験を行なった.この結果,MGBi-CGSTAB法を用いることにより,問題サイズの拡大による収束性の悪化というMILU前処理の欠点を補うとともに,MG法よりも広範な問題に対して高速に収束することを見い出した。 2) 内点消去型領域分割法 現在のところ構造型格子についてであるが、境界を二重にとることにより、キャパシタンス行列の形が単純になり、対角ブロック前処理を用いることにより、ICCG法より少ない演算量で解を求めることができることを示した。AP1000+上での並列化、とくに1領域の複数puによる並列化を実現。 3) 一般行列のCG法前処理 不規則な構造をもった格子で離散化すると、不規則な構造の疎行列を係数とする方程式が得られるが、これに対する一般的な前処理法を研究した。逐次計算では,問題に依存した性質を利用しない方法の中で最も速い前処理の一つとして,不完全コレスキー分解を使ったPCG法(ICCG法)があり,広く用いられているが,並列計算における汎用の前処理について,逐次計算でのICCG法ほど決定的なものはないといってよい.本研究では,逐次計算では有効ではないが並列性の高い,前処理としての定常的な反復法に注目した.そして,線Jacobi法を変形した定常的な反復法から導かれる行列形式のみを利用する並列性の高い前処理を提案,実装した.さらに,数値実験により,点Jacobi前処理と比較して収束が速いことを示した.
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