研究概要 |
三次元コンピュータグラフィックスを用いた可視化は,自然科学から人文・社会科学に及ぶ広範囲の領域に存在する,複雑な対象の構造や振舞いを効果的に理解する上で必要不可欠な技術である.ビジュアルな方式で非手続き的なプログラミングを可能にするデータフロー型モジュラー可視化システムMVEは,現在事実上の標準として定着している.しかしながら,可視化の要である「数値データに隠されている対象データの性質を最も顕著に表現するグラフィカルデータへ変換する」コツを,可視化の専門家ではない一般のユーザは通常もち合わせていない.そのため,こうしたMVEを利用する機会を得ても,自ら適切なモジュールを選択し,組み合わせて,個々の応用にとって真に有益な可視化ネットワークを構成することは容易なことではない.そこで本研究では,幅広い候補の中から個々の目的に適った可視化技法を選択する専門家のヒューリスティックスと,各々の技法に対応したネットワーク事例とを組み合わせた知識ベースを構築し,既存のMVEとの連動により,ユーザの要求に合致した可視化ネットワークを対話的に設計し,新たな情報発掘を可能にする可視化支援システムGADGETを開発した.また関連研究として,より柔軟な情報発掘機能の実現を目的として,MVEを利用し,マルチメディアデータベースへの問合せにおけるメディア固有の特徴抽出処理やパラメータ値設定を対話的に行えるような問合せ関数の設計支援システムMWMDの開発や,学内LANの管理・運用に関するデータの可視化という特定領域に対する情報の可視化支援システムのプロトタイプ開発を通じて,情報発掘のための次世代可視化システム構築に関する新たな知見が得られた.
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