研究概要 |
伝統的な図書館の運用形態を参考に,適合率を適度に保ちながら再現率も高い検索結果を得るため,ブラウジングを主体とした利用ができる電子図書館を構築した。具体的には,ユーザのプロファイルをもとに,商用の検索エンジンを使ってネットワーク上のデータベースを探す。そしてフィルタリング結果の文献集合について,文献相互間の概念的な関連性を類似度として数量的に計算し,類似度の大きさに従い良く似た文献ほど順番が近くなるよう文献集合を順序づけておく。検索結果としての文献集合が蔵書に当たり,順序付けは内容的に似た文献同士を近くに集める役割をしており,索引付けに当たる。 電子図書館は適応的に作り出される。質問が与えられると,似た文献ほど順番が近くなっているような文献の順序付けを反映し,かつ質問と似た文献の順番が質問と近くなるよう再調整する。この操作の結果,深く関連し合った文献のすべてが1カ所に集めて並べられるとは限らないが,複数の部分を部分ごとに見ると深く関連し合った文献ほどより近くに,という形で順序付けられたクラスタを成している。そして,得られた順序を保持しながら,類似度の大きい文献同士(質問と文献)ほど距離が近くなる空間を構築する。距離空間が,同じ主題の文献が物理的に近い場所に配架されている現実的な図書館に対応した,仮想の電子図書館となる。 要求に合致する文献は,質問との類似度の大きい文献が配置されているクラスタ(複数ある)中やその近くを,順次ブラウジングして取り出せばよい。必要な部分ごとのブラウジングを繋げて,全体的なブラウジングと見なすのである。ブラウジングを援助するため,文献の書誌的情報の可視化にも焦点を当てたナビゲータも構築した。文献の順序付けをベースとしたブラウジング法によれば,従来からのランキングを主体とした検索エンジンよりすぐれていることも実験的に示した。
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