研究概要 |
この研究では,いくつかのクラスの多目的最適化問題を単一目的の非凸型最適化問題として定式化し,その大域的最適解を効率よく生成するアルゴリズムを提案した.主な結果は以下の通りである: 1 2つの目的値の積が与えられた定数を越えないことを条件とする問題を研究し,有限時間で大域的な最適解を生成するためのアルゴリズムを構築した.ワークステーション上での実験によって,この積を含む制約式の数が5を越えなければ,アルゴリズムは充分に実用的なことが判明した. 2 0-1ナップサック制約をもつ多目的最適化問題を解決するため,分枝限定法に基づくアルゴリズムを構築した.分技操作の手続きにラグランジュ緩和を組み込んだが,これに必要な計算量は問題サイズの低次多項式で押さえられた.このアルゴリズムによって20目的,120変数の問題を20秒以内で解くことに成功した. 3 0-1ナップサック条件付き多目的最適化と凹型生産費用の生産輸送問題との関係を考察し,前者のためのアルゴリズムを後者のネットワーク問題に拡張した.その結果,既存のアルゴリズムを用いた場合の数百分の一の計算時間で生産輸送問題を解決できることが判明した. 4 2目的の最短路問題について研究を行ない,二つの強多項式時間アルゴリズムを構築した.一方は効用関数が準凹の場合に有効であり,もう一方は効用関数が準凸関数である場合に有効である.これらのアルゴリズムが,カーナビゲーション等に直ちに応用できることを示した. この研究結果は,よく知られている困難なクラスの問題であっても,その特殊構造を利用することで理論的にも実用的にも効率のよいアルゴリズムを設計することが可能であることを示すものである.
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